白色テロの時代を描いた、話題の台湾映画「大濛」。
遅ればせながら、話題の台湾映画「大濛」を観てきました。「すごくいい作品だったよ」と周りからおすすめされていたものの、この数カ月は息つく暇もない忙しさで、ようやく鑑賞することができました。

こちらは1950年代、白色テロ下の台湾を生きた人々の姿をリアルに描いた作品。
現在のように言論の自由や高度な民主主義が保証された台湾社会とは、まったく異なる時代。霧の中を自転車で疾走するシーンに象徴されるように、多くの不都合な真実が覆い隠される社会のなかで、必死に生き抜く人々の姿に、心が揺さぶられました。
映画を観ながら脳裏に浮かんだのは、これまで出会ってきた、あの時代を生きた人たちの姿でした。
私が台湾に来たばかりの頃、日本語世代のお年寄りから話を聞くと、「これはテープに録音したり、メモに書いたりしないように」と言われたことが何度もありました。そのたびに、戒厳令の影がまだ長く尾を引いているのだと実感したものです。
また、当時通っていた語学学校では、戦後中国から渡ってきた年配の先生がおり、日用品を入れた大きなバッグを肌身離さず持ち歩き、教室を移動していました。周りの誰も信用できないのか、それとも軍隊生活の名残なのか。切ない気持ちになったのを覚えています。
映画を観ているうちに、そうした記憶が重なり合い、いつの間にか涙があふれていました。
今回は台北市議員の苗博雅さんによる貸切上映会だったのですが、苗さんも「これまで観てきた台湾映画の中で、自然と涙があふれてきた作品は二つあり、その一本がこの『大濛』です」とお話しされていました。「より多くの人に知ってもらいたい」という思いから、今回の上映会開催に至ったそうです。

最後には陳玉勲監督も登壇し、「恨みや憎しみを描きたいのではなく、あの時代を忠実に再現することで、過去を知り、未来と向き合えると思うからです」という趣旨のお話をされていました。その言葉にもグッと胸を打たれました。

今後、日本でも上映され、この映画をきっかけに「少し前の台湾」を知る人が増えてくれたら嬉しいなと思います。
なお、台湾の歴史に詳しくなくても、構成や音楽も素晴らしいので、最後まで引き込まれるに違いありません。重いテーマを扱っているものの、クスリと笑える場面もあり、その匙加減もさすがです。
私ももう一度映画館に足を運び、あの霧の向こうにある時代を見つめてきたいと思います。

#大濛 #台湾映画 #白色テロ #台湾の歴史
知られざる「東北角」を探索。
台湾東北部に位置する東北角を探索。
海と山に囲まれ、奇岩や海蝕地形などダイナミックな地質景観で知られる東北角。
先月参加したファムトリップでは観光客があまり訪れることがないスポットを巡ったので紹介したいと思います。
まず最初のスポットは「龍門舊社」。ここは元々、平地原住民族によって開拓されました。清国時代中期に漢民族が入植し、彼らは土地を追われます。その後、水運で栄えましたが、鉄道が開通すると衰退。今では静かな静かな漁村となっています。

村には築百年の邸宅や昔ながらの井戸が残るほか、近くの河で採取された砂と石でできた家屋があります。その名も「砂礱厝」。この一帯は冬になると東北季節風が吹きつけ、この壁はその強風から守る機能があるとのこと。昔の人たちの生活の知恵を垣間見られます。

集落の入口には漳州人の守護神である開漳聖王を祀る寺廟があり、この裏手には日本時代の神社の狛犬や参道らしきものが残されていました。これについては詳細は不明ですが、ホース置きになっている狛犬はなんともシュールですよね。


次は「貢寮老街」へ。貢寮は日本統治時代に鉄道が開通したことで中継地点として発展しましたが、海沿いの道路が開通すると徐々に寂れ、人口が流出。今では高齢化が進み、訪れる人は多くはありません。近年は老街として整備されつつあります。

「老街」とは古い街並みのことを指し、九份や北埔など台湾各地に人気の老街があります。ここはわずか200メートルほどで、商店は数軒存在するのみ。お土産物屋やカフェで賑わうという訳ではなく、素朴でのんびりとした風情を満喫できるところです。老街本来の姿が残っていると言えるかもしれません。

入り口近くには地元ご夫婦が経営する野菜販売所があり、自家栽培の野菜が並べられています。目玉は台湾原生種の山芋。日本のとは種類が異なり、歯ごたえのあるもちっとした食感が特色。生のままではなく、スペアリブと一緒にスープとして味わうのが一般的だそうです。

老街の真ん中あたりには「狸和禾小穀倉」という雰囲気のよい店が。ここは貢寮で水梯田の保全に尽力している「和禾生產班」グループが運営しています。

自家製の紫米茶をいただきながら、彼らの自然生態に対する取り組みを見ることができます。農産物や雑貨なども少し販売されており、野生動物をモチーフにした刺繍バッジなどもあります。営業日は水曜と土曜のみですが、今後は隣の老家屋をカフェにするという計画もあるそうなので、期待したいところです。




そのほか、通りの端にはカフェ「雨布丁咖啡」があります。角に立っているため、建物自体がユニークな作りで、中を覗かせてもらうと絵になる猫ちゃんがいました。




そして、老街から少し離れ、畑の中をぐんぐん進んでいくと、清らかな渓流へ。タイミングが合えば、村人が食器洗いや洗濯物をしている姿が見られ、地元の人たちの暮らしに触れられます。




貢寮老街は台鉄貢寮駅から徒歩10分ほど。隣りには海水浴場で有名な福隆もあるので、機会があれば途中下車してみてください。

昼ごはんは老街から少し離れた幹線道路沿いにある「酒嚢飯袋」で東北角の特産品を味わいました。イカやトコブシ、原生種の山芋が入ったスープなど。鮮度抜群の食材とほど良い味付けで箸が進みました。



そして、今回の旅で最も印象深かったのが「海女さん」。
東北角は石花菜(テングサ)が名物ですが、これを採取する人のことを台湾語で「騎山挽」と言います。近年は観光PRの関係からか「海女」と呼ばれるようになっています。

この日、レクチャーしてくださったのは70代の陳月雲さん。子供の頃から手伝っているそうで、大ベテラン。ちゃきちゃきとした元気な方で、石花ゼリーを摂取しているからなのかお肌もつるつるでした!

自ら作った頭巾やゴーグルを身に着けてテングサを採取する様子を再現してくださいます。


採取したテングサは貝殻や石、ゴミなどを取り除き、きれいに洗ってから天日干しするという作業を何度も繰り返します。

この石花菜を用いて、寒天ゼリー(石花凍、石花露)が作られます。パッションフルーツやレモン、蜂蜜などを加えて飲むことが一般的ですが、陳さん夫妻が経営する「搖搖石花露」ではそれらを用いず、磯の香りがダイレクトに感じられるものでした。台2線濱海公路沿いのガソリンスタンド脇にあるので機会があればぜひトライを。

ちなみに、日本の研究者の方によれば、この石花菜の採取は日本統治時代に沖縄県から出稼ぎに来た人々によって始められたそうです。

なんと台湾のトコブシの約8割が貢寮産だそうです。
ここは薬などを使用しない天然の養殖が自慢。自然に優しいだけでなく、プリプリとした良質なトコブシが産出されます。

二代目の李勝興さんは会社勤めをした後、家業を継ぐために故郷へ戻って来たという方。一時期はトコブシの生産量が激減してしまったそうですが、養殖方法を改善し、現在は見事に復活。トコブシ以外にエビや海ブドウなども育てています。

海ブドウは沖縄のイメージがありますが、近年は澎湖列島や金門島、台東などでも養殖されています。

ここではトコブシをバーナーで焼いて味わう体験や、海ブドウ味の麺などを提供しています。

ちなみに、「鮮物本舖」は北部濱海公路沿いにあり、最寄りのバス停「船里塢」は可愛らしいタイル作りなので、思わずパチリ。もしここを通りかかることがありましたらぜひチェックしてみてください。

のんびりとした時間が流れる東北角。交通は決して便利ではありませんが、都会の喧騒を離れて、大自然のなかで静かに過ごしたいという方にはおすすめのスポット。
ファムトリップでは地元に戻ってきた若者や結婚を機に移住してきた女性が町案内をしてくださいました。皆さんこの土地を愛し、様々な方法で盛り上げようとしています。もしかすると数年後には今より少し賑わっているかもしれません。
また、今回は訪れませんでしたが、東北角にはソフトクリームのような奇岩「南雅奇岩」や絶景が続くハイキング歩道「鼻頭角」もあります。知られざる見どころがたくさんありますので、注目していきたいところです。
新竹の仙境『The One南園人文客棧』でとっておきのカルチャー体験。

新竹県新埔に位置する『The One南園人文客棧』。高鐵新竹駅からは車で約20分、台北からは車で約1時間半の距離。鬱蒼とした緑に囲まれ、「朝日がどこから昇るかが分からない」といわれるほど山深い場所にあります。まさに「仙境」という言葉がふさわしい場所。
CMや雑誌にも登場したオリエンタルな建物。
知る人ぞ知る隠れ家的な宿ですが、2016年には台湾観光局(当時)の長澤まさみさんを起用したプロモーションビデオに登場。さらに2024年にはCREA台湾特集の表紙を飾ったこともあります。



27ヘクタールという広大な敷地には、江南式の庭園や閩南(中国福建地方南部)様式の建築、バロック風の回廊などがあり、そのスケール感と壮麗さにはただただ圧倒されてしまうばかりです。

ここは元々は1985年に大手新聞である「聯合報」の創設者、王惕吾氏が隠居用に建設した邸宅で、会社の保養所として利用されていた時期もありました。2007年からライフスタイルブランド<The One>が運営を手掛け、2008年にホテルとして一般開放されたという経緯があります。

設計を手がけたのは「台湾の建築の父」といわれる漢寶德氏。台湾の建物の近代化を進め、かつ伝統建築の調査・研究に尽力した人物であり、ここでもモダンな建築スタイルが取り入れられています。

CEOである劉邦初さんはハイテク企業の経営者。台湾の風土と文化を伝えることに使命感を抱き、20年前に<The One>を創業。「ローカルこそグローバル」という言葉を掲げ、地域の魅力を掘り下げ、世界に広めていく取り組みをしています。
今でこそ台湾各地で地域創生が盛んに行なわれていますが、20年前はまだまだ珍しい存在。こうした動きの先駆者と言えます。


ディープな文化体験コースが開始!
今年は20周年という節目にあたり、「異數悦遊(非日常的な空間で心から楽しく遊ぶ)」というプロジェクトを始動。郷土文化をより深く知ってもらうため、「地酒」「中華菓子」「コーヒー」「器」「工芸品」といったテーマ別の体験コースが用意されています。
講師となるのはそれぞれの分野のプロフェッショナル。ゆったりとした時間が流れる中で、とっておきの学びの体験ができます。
地酒からこの島の豊かさを知る。
私たちが体験したのは「地酒」コース。講師は台北市内で『The Herbal 香草窗』というバーを経営するバーテンダーの侯力元さん。

この日は台東に醸造所を構え、国際的な大会で評価されている<東太陽製酒>のクラフトジンをテイスティング。台湾原住民族が用いるレモングラスのようなスパイス「馬告」や山椒のような「刺蔥」のほか、東京食品展で好評だったというパクチー(香菜)を用いたものなど。どれも驚くほど香り高く、すっきりとした飲み心地。

また、侯力元さんが<東太陽製酒>と一緒に手がけたお酒もあります。一つは、台東産の手摘みの桑の実、苗栗産の三湾梨、台中産の桃を用いたフルーツ酒「胭脂扣」。もう一つは、台東県鹿野産の紅烏龍茶を浸け込んだ梅酒「鹿野」。ほのかな甘さでまろやかな風味。飲みやすく、あっという間にグラスが空いてしまいました。

「地酒」コースにはサツマイモ焼酎で知られる「恆器製酒」のオーナー、羅已能さんによるテイスティング講座もあります。羅さんは台湾らしいお酒を作ることに並々ならぬ情熱を抱いている醸造師で、新作はなんと椪柑(ポンカン)、桶柑(タンカン)、茂谷柑という3種類の柑橘を用いたもの。甘酸っぱさの中にほろ苦さがあり、格別な味わいでした。ここで販売もされています。


バラエティに富んだコースが充実。
「器」コースでは<森雨制陶>の創業者である劉森雨さんが講師となり、暮らしの中での器の楽しみ方をお話ししてくださいました。劉さんは元々は出版社に勤めていましたが、退職後、趣味で陶芸を始め、現在は淡水に工房を構え、作品作りをしています。<The One>の食器の一部には劉さんの作品が使われています。



そのほか、台中発の中華菓子店「喜豐香1985」の二代目である黄可欣さんと陳建達さんによる「中華菓子と東方美人茶と一緒に味わうひととき」、雲林県莿桐郷にある小さな農村でコーヒー文化を普及する「芒果咖啡」の店主・廖思為さんによる「コーヒーの旅」、竹編みなどで知られる「本質創作室」のオーナーである李雅靖さんによる「工芸品の手作り体験」など。〈The One〉こそ実現できる素敵な講師陣が揃っています。
台湾の風土と文化を表現した創作料理。

<The One>と言えば、小規模農家から仕入れた自然に優しい食材を用いた創作料理でも知られています。
今回の夕食のテーマは「タレ(醤)」。台湾の料理はタレや醤油が味付けの肝になっており、地域によって異なる風味の醤油があるほど。新埔は客家系住民が多く暮らす土地であり、ここでも客家の食文化が取り入れられています。
たとえば、前菜のタコ料理には、台湾北部の客家人が愛用する「桔醤」という柑橘ソースを使用。

台湾南部の客家集落、屏東県内埔でおやつとしてよく食べられる「海老粄(海老のかき揚げ」をアレンジしたものも登場。こちらは自家製の発酵チリソースとパイナップル風味の豆板醤といった辛味と酸味と塩味、甘味が混ざり合った独特なタレでいただきます。

メインは芸彰牧場の牛フィレ肉。牛をこよなく愛するエンジニアの方が飼育環境を改善するために開いたユニークな牧場の肉で、一週間から二週間かけて熟成させています。こちらは沙茶ソースに塩漬けレモン汁を加えた特製タレが添えられています。

デザートには客家名物である「牛汶水」という餅デザート。これは新竹県関西の特産である仙草(ハーブ)と伝統製法を守り抜く<民生食品工廠>の醤油を混ぜたタレで味わいます。


朝も地のものを用いたヘルシーな朝食。
朝ごはんもバラエティ豊か。まずは<本草堂>の手作りのアマニオイルをひとさじ。トーストはベーカリー<呉寶春>によるもので、低温圧搾された黒ゴマ油や嘉義県「洲南鹽場」の塩の花などが原料に用いられています。また、特産品であるポンカンの蜜漬けも入っています。
メインは高温で焼き上げたナンヨウアゴナシという魚料理。これには添加物を一切使用しない<山坡上的小厨房>の柑橘系ジャムが添えられてます。

最後は海鮮入りの水餃子。こちらは自然農法で栽培された包種茶のスープと一緒にいただきます。

ドリンクには<芒果咖啡>のオーナーが『The One南園人文客棧』の庭園をイメージして特別に焙煎したというコーヒーと、野山を分け入って研究を重ねる〈三玉號〉の野草茶を用いたミルクティーを選べます。
細部までこだわり抜いたメニューにはオーナーやシェフたちの心意気が感じられます。
メディア向けイベントでは新竹名物が盛りだくさん。


今回のイベントでは新竹名物がたくさん用意されていました。東方美人茶で煮込んだ卵や切干大根入りの草餅、チマキ、干し柿やミニトマトなど。
中でもシナモン風味の丸いパンのような「水潤餅」は格別なおいしさ。「水潤餅」は現在、作り手が減り、一軒しか専門店がないとのこと。<The One>にはこうした時代とともに消えゆく味を応援したいという気持ちがあるそうです。干し大根入りのクリームが添えられており、このクリームが予想外のおいしさで、持ち帰りたくなりました。
「水潤餅」自体は新竹市内で購入できますのでぜひお試しを。


くつろぎのラウンジと大きな湯船がある客室。

夜はラウンジでサツマイモ焼酎や紅烏龍風味の梅酒をいただきながらレコード鑑賞。天井の高いラウンジに重厚な音色が響き渡ります。
広々とした客室はベッドルームとバスルームに分かれ、ベッドは小上がりの板の間に置かれており、まるで自宅にいるかのような安らぎを覚えます。丸い湯船も大きく、ポットに入った薬草茶を加えられ、ゆったりと足を伸ばしながら薬浴を満喫できます。


晴れた日はもちろんのことですが、雨の日も霧の日も風情が感じられる『The One南園人文客棧』。台北からちょっと離れるだけ仙郷にワープしたかのような気分になります。今年は日帰りプランが充実しているので、この機に出かけてみてはいかがでしょうか。

ちなみに台北市内の中山北路には『The One生活概念店』というコンセプトストアがあります。こちらは干し大根や醤油などのオリジナル食品を販売するほか、創作料理レストランやカフェもあります。新竹まで訪れる時間がないという方はまずはこちらを覗いてみてください。
文:片倉真理、写真:片倉真理・佳史
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日帰りプランは2種類
【南園拾樂】12:00~16:30
庭園散策および体験コース「コーヒの旅」「中華菓子と東方美人茶の賞味」
✳︎他のコースも今後開催される予定です。
【雅叙南園】
10:30~16:30
おもてなしのお茶、庭園ガイドツアー、山と海の幸を用いたランチ、フリータイム。
いずれも平日は2200元+10%、休日2400元+10%
宿泊の場合は一泊二日は平日 16800元+10%/晩、休日18800+10%/晩。
オフィシャルサイトはこちら。
『星のやグーグァン』で冬の養生旅。
台中の山間部、日本統治時代には「明治温泉」と呼ばれていた名湯、谷關温泉。ここに2019年にオープンしたのが「星のやグーグァン」。予約がなかなか取れないと言われる人気温泉リゾートです。

様々なアクティビティがあるほか、季節に合わせた特別プランもあり、現在は「冬の陽光スパトリート」を展開中。一日一組限定というスペシャルプランです。
緑溢れるガーデンでフラワーアレンジメントを体験。
「星のやグーグァン」の魅力の一つは「ウォーターガーデン」と呼ばれる広大な庭園。自然の渓流を生かした庭には五葉松や二葉松といった台湾特有の樹木が聳え立つほか、水辺にはカラーなどが咲き誇っています。せせらぎの優しい音を聴きながら散策するだけで魂が浄化されていくような気持ちになります(大袈裟ではなく、本当に)。



庭には「ガゼボ」という名の休憩所が設けられており、このプランではガゼボのなかでフラワーアレンジメントを体験できます。講師はアメリカで教えていた経験もある台中在住の廖美雯さん。穏やかな笑顔で丁寧に教えてくださり、手先が不器用な私でも部屋に飾っておきたくなる作品を仕上げられました。作品は客室に運んでくださり、持ち帰りもOKです。



広々とした温泉フロアがある客室「月見」。
今回宿泊したのは「月見」という名の客室。壁一面の大きなガラス窓からは大甲渓と中央山脈が眺められ、まるで絵葉書の中にいるかのような気分になります。鳥たちのさえずりも近くに聞こえ、大自然を存分に満喫できる部屋です。


部屋はメゾネットタイプで、階下の温泉スペースはなんと通常の2倍!広々とした浴室の横にはマットが敷かれているだけでなく、洗面所の脇には畳敷きスペースがあり、入浴後にはゴロンと横に寝っ転がれるという幸せ設計です。こういった動線の良さに日系ホテルならではの心遣いを感じられ、嬉しくなりますね。

山の澄んだ空気を吸いながらの温泉浴は癒やし効果満点。

湯は無色透明のアルカリ性炭酸水素塩泉で、肌への刺激が少なく、しっとりと染み込んでいきます。しかも「24時間源泉かけ流し」という贅沢さ!ここで使用された湯はろ過された後に庭のせせらぎに流されており、環境面でも配慮されています。

このプランはチェックアウトが13時なので最終日ものんびりでき、滞在中には何度も温泉浴を満喫。このおかげでボロボロになっていた肌も張りが出てきて、泉質の良さを改めて実感したのでした。
夜も朝も体を温められる養生食。
今回の楽しみの一つは地元産の食材を使った体によい食事を味わえること。しかも部屋でまったりとくつろぎながらいただけます。スタッフによって運ばれてきたのは、日本では高級品とされる烏骨鶏が丸ごと一羽入った鍋。こちらはすでに5時間ほど煮込まれたもので、部屋で温め直して味わいます。

鍋の具材には和牛や谷關産のチョウザメなどもあり。チョウザメは水が清らかな場所で養殖されているとのことで、臭みがなく、あっさりとした風味。烏骨鶏もチョウザメも栄養価が高く、英気を養えること間違いなし。ちなみに谷關は山深い場所にあるので台北よりも気温が低く、体を温められる鍋料理がありがたかったです。


翌朝はキヌアを用いた穀物粥の朝食を。こちらは「鳳眼果」というピンポーの樹のオレンジの実や、秋の味覚である菱の実などが入っています。日本ではあまり馴染みがない食材ですが、栗のようなホクホクとした食感を味わえます。こちらもボリューム満点で朝から活力を得られました。


翡翠を使った台湾らしいスパトリートメント。
さらに今回は「翠」というトリートメントを体験しました。こちらは温めた翡翠を使用したトリートメントで、体の芯からリラックスできるというもの。私自身、気がついたら深い眠りについていました。トリートメント後は漢方ハーブティーをいただき、体がさらにすっきりと。
また、今回、改めて実感したのは谷關温泉の夜空の美しさ!天気に恵まれたこともありますが、しんしんとした冬の夜空に輝く星は忘れられない光景です。建物内にある「風の間」という特別デッキから眺められるのでぜひ。


「星のやグーグァン」の冬の養生プラン、いかがでしょうか。私自身、三回目の滞在となるのですが、今回はまさに朝から晩まで癒やしの連続で、日頃の疲れを取り除くことができました。

仕事や家事などで激務に追われている方にこそ体験してもらいたいものです。なお、スパトリートメントやアクティビティはプランに参加しなくても体験できます。

【冬の陽光スパトリート情報】
2025年2月27日まで。毎週火~木曜日までの二泊三日。料金は一人42,951元(税込み、サービス料と宿泊費は別)。含まれるものスパ3回、フラワーアレンジメント、夕食2回(温補チョウザメ鍋、会席料理)、朝食2回(穀物がゆ朝食、通常朝食)、レイトチャックアウト13時、台中市内と星のやグーグァンの往復送迎。一日1組限定。
追記)2022年夏の宿泊体験記はCREA Webで掲載されておりますので、宜しければそちらもあわせてご覧ください。
#星のやグーグァン #谷關溫泉 #星のや #台中 #台湾 #温泉リゾート
写真:片倉真理、片倉佳史
台湾のトップシェフ、アンドレ・チャン氏が表現する青森の魅力。
台湾のカリスマシェフ、アンドレ・チャン氏が率いるファインダイニング「RAW」と青森県のコラボ、「青森周」が本日(12/15)から18日まで4日間のみ開催されています。メディア向け試食会へご招待いただいたので、リポートしたいと思います。

記者会見では青森県の三村申吾知事も登場。特産品であるリンゴやブランド米の「青天の霹靂」、山芋、牛蒡などのTシャツを重ね着されていましたが、会見中に一枚一枚脱いでいき、場は大盛り上がりでした。まさに「トップセールスとは何たるか」を目の当たりにした瞬間でした。
知事によれば、青森の方言では驚いたときや嬉しいときに「ロー」という言葉で表現するとのこと。奇しくもレストランの名前も「RAW」。このため、何度も何度も「ロー」と叫ばれていました。
4年前に始まった「青森周」はアンドレさんが青森を旅し、その魅力を料理で表現するという企画。この二年間はコロナ禍であったため、オンラインで交流。今年は久しぶりに現地を訪れ、青森の魅力を再発見されたとのこと。入り口には「リ:ディスカバー(RE:DISCOVER)」と書かれた暖簾が掲げられていました。

「青森周」のテーマは毎年異なりますが、今回は「reduce」、「recycle」、「rethink」という青森の暮らしに根付くサステナビリティ(持続可能性)に注目。「食材」、「環境」、「創意」、「文化」、「産業」、「工芸」、「生活」といった7つの切り口から7品の料理とデザートで表現されていました。青森では豊かな自然や伝統工芸を守るため、様々な創意工夫、努力が続けられているとのことで、アンドレさんは唯一無二の場所と感じているそうです。
特に印象的だったのは「お野菜クレヨン」をモチーフにしたミネストローネ。青森では見た目が悪い廃棄処分されてしまう野菜を再利用して、環境に優しいクレヨンを作る取り組みが行なわれているそうです。

そのほか、津軽地方に伝わる工芸「こぎん刺し」をイメージしたカシスソース和えの牛肉料理や郷土料理の「すしこ」や「きんとん」の要素を取り入れた料理なども。


特産品であるホタテ特産品であるホタテは北海道に次ぐ生産量とのことで、ホタテの殻の再利用に力を入れているそうです。このお皿だけでなく、お箸もホタテの殻の粉を用いたものでした。

八戸の縄文文化から発想を得たという料理は、キノコやクルミなどを炭火焼きや燻製にしたもので、甘さとほろ苦さが混じり合い、味わい深い逸品でした。
アンドレさんは八戸では朝市できのこのスープを味わい、その後、「是川縄文館」で縄文時代の人たちがキノコを食べていたことを知り、1万5千年前の人たちと自分たちが繋がっているということに感銘を受けたとのこと。八戸での一日は特に忘れらない思い出になったそうです。

さらに青森が誇るブランド米「青天の霹靂」を用いた料理も。これは人工衛星で撮影された水田の画像やアプリを使って栽培されていますが、アンドレさんは「人口が少ない土地で、最先端の技術を駆使し、最高品質のお米が作られているなんて素晴らしいですよね」と、大絶賛されていました。
さらに青森が誇るブランド米「青天の霹靂」を用いた料理も。これは人工衛星で撮影された水田の画像やアプリを使って栽培されていますが、アンドレさんは「人口が少ない土地で、最先端の技術を駆使し、最高品質のお米が作られているなんて素晴らしいですよね」と、大絶賛されていました。

また、RAWはお酒のペアリングも評判ですが、昨日は特別に宜蘭のタイヤル族の「不老集落」で作ったアワ(粟)を原料にしたシャンパンもいただきました。アワを100%使用しているので、質がなかなか安定しないとのことで、完成までに二年半の歳月がかかったそうです。会場には醸造家の女性も来られていました。さっぱり爽やかな飲み心地がクセになるおいしさでした。

食事会の途中では台北在住のシンガーソングライター、馬場克樹さんも登場!「津軽海峡冬景色」をアカペラで熱唱してくださり、会場の皆様が美声に聞き惚れていました。

最後に、今回個人的に驚きだったのは、アンドレ・チャンさんが大のプロレスファンだったこと。アンドレさんの五日間の旅をまとめたYouTube番組の中でアンドレさんが猪木さんのお墓をお参りするシーンがあるんです。アンドレさんとプロレスが結びつかず、びっくりでした!
こちらの番組は旅に同行されたグルメ作家の高琹雯さんが制作したもので、アンドレさんのチャーミングな人柄がよく分かる内容となっています。日本語訳もあるので、ぜひご覧になってみてください。
コースはデザートを含めて全10種類でしたが、一皿一皿が驚きと発見の連続で、同時に青森への熱い思いも伝わってきました。五感で体験した青森のモノ、コト、ヒトを料理とデザートという形で昇華させているアンドレさんはアーティストそのもの。豊かな発想と尽きない探究心に圧倒されながら、青森の良さを再発見したひとときでした。
https://www.raw.com.tw/
大稲埕のヨーロピアン・バーと「月の光」。
日本人観光客にも大人気の大稲埕エリア。コロナ禍により閉業を迫られた店も少なくありません。それでも、感染者が少なければ、大勢の人たちで賑わっています。一方で、新しい店も次々と登場し、個性的な店が増えています。今回はそんなニューオープンの店の中から、お気に入りのバーを紹介したいと思います。
迪化街で一際目立つバロック風の装飾を施した建物。正面の壁に『屈臣氏大藥房』と記された建物は、1917年に開かれた台湾初の西洋薬局があった場所です。1996年に火災で焼失し、長らく廃墟となっていましたが、修復が進められ、現在はショップやティーサロンなどが入る複合ショップに生まれ変わっています。その中の一つが2021年にオープンしたヨーロピアン・バー『Antique Bar 1900』です。

3階に上がり、木の扉を開けると、ダークグリーンの壁と木目調のインテリアが印象的な空間が現れます。ヨーロッパの市場で手に入れたというアンティーク家具やオブジェが置かれ、1900年代初頭の華やかかりし頃のヨーロッパの風情が再現されています。迪化街の喧騒とは異なった、落ち着いた空気に包まれるはずです。

迎えてくれるのは、口髭がトレードマークのアランさん。ベルギーに長らく滞在し、欧州各地のバーを訪ね歩いた経験があると言います。「台北にはアメリカ式や日本式のバーは数多くありますが、ヨーロッパスタイルのバーはありません。ここではドリンクを提供するだけでなく、ヨーロッパの文化を広く知ってもらうため、行事や風習も紹介しています」。実際に、私が最初に訪れた日はキリスト教徒の祭日である「公現祭」に当たり、ガレット・デ・ロワをいただく儀式を初めて体験しました。

店には様々なカクテルがありますが、中でもおすすめしたいのが「アブサン」という薬草系リキュール。飲み方がユニークで、アブサンを注いだグラスに、砂糖をのせたスプーンを置きます。その後、壺から水を垂らし、砂糖を溶かして、甘さや濃さを自分で調整していきます。薄暗い光の中で水滴が輝く様子は何とも優雅な雰囲気です。

そして、飲み物以外にも面白いサービスがあります。それは部屋の片隅に置かれているピアノで、ドビュッシーの名曲「月の光」を弾いた方には、ドリンクを一杯サービスするというもの。
聞けば、アランさんはかつてパリに憧れていたことがあり、特に1920年頃に開設された書店「シェイクスピア・アンド・カンパニー」を訪れるのが長年の夢でした。その後、ベルギーに滞在した頃に、念願叶って訪れてみたところ、ドアを開けた瞬間から「月の光」が聴こえてきたのだそうです。二階へ上がってみると、そこには誰でも自由に弾けるピアノがあり、「月の光」を弾く男性客の姿があったとのこと。
「まるで夢のような瞬間でした」と、今でもうっとりとした表情を浮かべるアランさん。この体験が脳裏に刻まれ、それ以来、「月の光」はアランさんにとって特別な曲になったそうです。そして、自分の店でも誰かに同じような体験をしてもらいたいと、上述のようなサービスを始めたとのこと。自身の体験や感動を他者と共有したいという考えが素晴らしいですよね。
現在、大稲埕にはこうした音楽と芸術を愛する人たちが開いた店がいくつかあります。この街はかつて交易で栄え、多様な文化が入り込み、独自の文化を発展させてきた歴史をもちます。戦後の一時期、寂れた印象もありましたが、ここにきて、再び新たな文化が流入し、往年の空気を取り戻しているかのようにも見えます。
余談ながら、失礼ながらも私は心の中で、「『月の光』を弾けるお客さんはいるのだろうか」と思っていました。しかし、後日訪れた際、美しい音色を奏でる女性客に出会いました。歴史を刻んできた洋館で聴く「月の光」。それはより一層感慨深いものがありました。日台の往来が再開したら、「我こそは!」と思う方はぜひ弾きに訪れてみてください。きっと、そこから新たな交流が生まれると思います。
Antique Bar 1900

台湾オペラの新しい可能性を探る試み「アフロディーテ~阿婆蘭」
台湾と日本の交流を文化で紡ぐアートイベント「Taiwan Now」。そのクライマックスを飾ったのが日台共同の創作劇「アフロディーテ 〜阿婆蘭(アポーラン)」。12月25日に高雄の衛武営国家芸術文化センターで開催されたのですが、その一日前に記者や関係者へのお披露目会にお招きいただきました。

「アフロディーテ 〜阿婆蘭」は、台湾の伝統劇である「歌仔戲(ゴアヒー)」に現代芸術の要素を加えたもの。歌仔劇は「台湾オペラ」とも言われ、道教寺院の前で神様の生誕祭の時などに催されています。今回は現代芸術作家のやなぎみわ(柳美和)さんが劇本と演出を担当し、これまでにない歌仔戯の世界が創り上げられていました。
演じるのは、台湾南部に拠点をもつ「秀琴歌劇團」と「春美歌劇團」と「明華園天字戲劇團」の三大劇団。いずれも人気の高い劇団であるため、一年のほとんどが公演で埋まっているそうです。今回は総監督である台湾文化基金会の董事長、林曼麗さんが長年懇意にしていたことから、夢のようなコラボレーションが実現したそうです。

また、国際的なプロジェクトではつきものだと思いますが、言語面でも大変な労力を要したそうです。歌仔戯ではホーロー語(台湾語)の文語が用いられており、台湾の人でもホーロー語を日常的に使用していない人たちにとっては難しく感じるそうです。このため、舞台の脇に字幕が設けられていることもあります。
今回はやなぎさんが書いた日本語の脚本を劇作家の王友輝さんがホーロー語の脚本に翻訳し、さらに歌詞へと書き換えています。そしてホーロー語の脚本をやなぎさんに確認してもらうため、歌詞を日本語へ訳すという作業を繰り返したそうです。
台湾では戦後に中国語(北京語)が公用語とされ、ホーロー語は学校や公共の場では話すことが禁止された時代があります。王友輝さんは「歌仔戯の抑揚のある歌声の美しさ、そして長らく軽視されてきたホーロー語文学の美しさを強調した」と語っていました。実際にステージで歌い上げられたホーロー語歌曲は、歌詞の内容は分からずとも、迫力あり、胸に迫るものがありました。

さて、演目についてですが、「アフローディーテ」とは、かつて台東の沖にある「蘭嶼」の山中に咲いていた白い胡蝶蘭のことだそうです。台湾では発音が似ていることから「阿婆蘭(アポーラン)」と呼ばれています。現在、私たちがよく目にする胡蝶蘭は人工的に交配されたものであり、野生種はすでに幻の存在となってしまっています。
やなぎさんは台湾の民俗文化や自然に魅せられ、20年以上、台湾に通い続けており、実際に原生種の蘭を調べるため、蘭嶼まで足を運ばれたそうです。今回は新型コロナ禍の中、隔離期間を経て台湾で演出指導をしていましたが、お母様のご病気のため、公演を見られずに帰国。リモートで最後の最後までやり取りを続け、公演の成功を見守っていたとのことです。
今回の物語の舞台は、多様な花が咲き誇り、自然とともに原住民族が暮らす美しい島。ここへ蘭の調査をしている人類学者の森さん(森丑之助と想定されます)と植物学者の林さんが訪れるところから始まります。林さんがひそかに「阿婆蘭」を研究室へ持ち帰り、大きな花に改良することに成功。そこへお金に目がくらんだ商人が現れ、「阿婆蘭」の遺伝子が複製され続けることに...。最後には、クローン蘭が合唱する中、野生の蘭の小さな声ががき消されていくという物語です。



「人間の欲と自然摂理の破壊」、「クローンが本物を淘汰する危機」など、様々なメッセージが込められているように感じましたが、同時に台湾という土地についても考えさせられました。
台湾は歴史的に幾度も異民族の支配を受けてきましたが、人々の根っこにある部分は変わりません。そして、多様な文化の影響を受けながらも自分たちの文化を作り上げていく柔軟性やたくましさがあります。これに改めて気づかせてくれる舞台でした。まさに今回の創作歌仔戯そのものがその表れとも言えそうです。
最後のフィナーレでは演者たちが明るく楽しく踊りながら登場。台湾の人たちの力強さやパワフルさが伝わってきて、胸の奥が熱くなりました。

なお、本公演のプロジェクトはコロナ前から始まっており、本来は東京オリンピックの開催に合わせ、東京駅前の広場で公演される予定だったそうです。非常に残念ですが、またいつかその日が来ることを願ってやみません。
最後にお知らせですが、「アフロディーテ 〜阿婆蘭」は1月8日までYouTubeにて無料配信(日本語の字幕付き!)されます。年末年始のお休みに、ぜひご覧になってみてください。
日本語パンフレットはこちらです
https://issuu.com/taiwannow/docs/taiwan_now_aphrodite_jp

